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『‘知らない’ことの重要性』



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The Importance of Not-knowing
第1巻、第2号 ; 2003年1月15日

精心道オフィシャル・ニュースレター
「ピュア・ハート、シンプル・マインド」

Pure Heart, Simple Mind ®

【今号の内容】

  1. ニュースレターの目的
  2. はじめに
  3. 無意識の縛りに気づく
  4. ‘知らない’ことの重要性
  5. プラクティス「何も‘知らない’」
  6. おすすめ書籍・音楽
  7. エンド・ノート
  8. 関連リンク
  9. 著作権・登録と解除

1. ニュースレターの目的

このニュースレターは、思いやりと明快さをもって創造的に生きようとする人たちに向けて配信しています。ご感想・ご質問は下記のアドレス宛にお願いします。seishindo@seishindo.org

基本的に、このニュースレターでは精心道の理論と実践をとりあげます。さらに、詳しく知りたい場合は精心道サイトにアクセスしてください。 http://www.seishindo.org/

2. はじめに

前回のニュースレターは、自分がいる境遇から何を学習するかに人生の質は依存するという内容だった。良質の学習=良質の人生といえるだろう。

今回は‘知らない’ことの重要性に焦点をあてよう。自分がいるこの世界や自分自身について何か新しいことを学ぶときには、自分が過去に身につけたことを忘れることが必要になる。これは前号と共通した考えだ。

成長の途上で、私たちは間違ったことを強烈に教えこまれることがある。「おまえは注意が足りない、だらしがない、わがままだ、間抜けな子だ」大人たちは怒鳴りながら子どもを叱責する。子どもが言われたことをナイーヴに信じたなら、将来自分が何か新しいことを始めようとするときその言葉が呪文のように足かせとしてはたらくかもしれない。あるいは‘自分はこれでいいんだ’という基本的な自己肯定感をもつことがひどく阻害されることもある。だから、自分が新しいことを学習しようとするとき、まず過去に学んだことを忘れることが求められる。

別の言い方をすれば、何か新しいことを学ぶときには、「何を自分は忘れ去ることが必要なのだろう?」と自分に問いかけてみるといい。真実を知ろうとするなら、本来の自分に戻る必要がある。本来の自分に戻るとは、普段もっている自分の主張や、いまの地位や、何が間違っていて何が正しいのかという自分の判断や信じている基準を手放すことを意味する。

自分の精神が澄んでいるとき、議論、言葉、思考などは必要としない。ほんとうにそうなのだ。

3. 無意識の縛りに気づく

 トレーニング中にくり返し怪我をしている、とても熱心なボディビルダーとのセラピーセッションで、私はこんなふうに語りかけた。「こうやって向い合せに2 人で座っています‥‥深呼吸してください‥‥自分の身体が動くのにまかせます‥‥いくらか自分の傷に注意をむけ、その傷を感じます‥‥動きながら、過去のいろんな時に傷を受けたのがどんなふうだったか、まったくそのとおりに身体の感覚を呼び戻してください。その地点で、身体の動きを停止させます。静止して座ったまま、自分の傷を感じます。過去に負ったすべての傷から、自分の身体が学んだことは何なのかを語ってください」

 数分間、クライエントは意識的な呼吸をして身体を動かした後、動きを止めて、自分の身体の視点から語りはじめた。
「あんたにはわからないだろう、僕がほんとうは何ができるか、相応しくないものは何なのか、あんたは気にも止めていないんだ。自分が他の人の前でいい格好をするために、僕をひどい目に遭わせてずいぶん嬉しそうだな」

 再び、呼吸して動くようにクライエントを促した。動いているあいだ、私は言った。「どうぞ、自分の身体と協力しあってより良く働けるように、自分の理性に教えてあげてください」

 数分かそこら、クライエントは動きながら意識的な呼吸をした後、自分の理性に向かって、身体の視点からの助言をした。
「僕が動くままに感じるんだ。僕を感じてくれ、そしていっしょに動け。僕にとって何が自然で、何が自然でないかを感じるんだ。何が僕にとって不自然で、何があんたにとって不自然かを‥‥」

 身体の視点からの語りを続けるあいだ、クライエントは自分の理性的精神にむかって、自身のことをどう感じるか、自身の価値をどう思うかを、穏やかに訊いていった。
 クライエントの身体が自分の理性的精神に提言したことで、もっとも興味深かったのは次のような言葉だった。「想像してみてくれ、あんたが身体なんてもっていなくて思考によってのみ存在しているさまを。身体なしで感じる自分の価値はどんなものだい?」

 さらに身体の語りは続いた。「何か言いたいことがあるみたいだな。もし自分が理性だけの存在だったならどんなにいいだろうかって思ってるんだろう。そして、身体のほうがいくらかもう少し完璧であったら良かったのにって。でも僕はその言葉を信じないよ。あんたが本当は嫌な思いを味わっているのを感じるよ。あらゆる非難を僕に負わせたいだけなんだろう?」「あんたに知ってほしいんだ。鏡の前で、その姿がどんなに駄目で不格好に見えるかをあんたが口にするとき、僕がどれほどひどい気持ちでそれを聞いているかをね」

 ここからクライエントと私は、とても意味のある話し合いを進めることができた。自分が愛されたり、人に関心をもってもらうためにどれほど「何かをもっと」「さらにより良く」しなければならないといつも感じていたか、そんな自分の価値についての思いを話し合った。夜、父親が仕事から帰るといつも決まって訊くのが「おい息子、今日はどんなことを達成したんだ?」というセリフだったことを、彼はとくに驚いた様子もなく語った。

 そうやって徐々に「自分の価値は、何を達成したかに依存していて、ただ自分のままでいたのでは愛情はもらえないのだ」と学習し、彼は自分の信念やアイデンティティを、自分の達成したことといつも関連づけて考えるようになったのだ。
  2人でセッションを進めるうちに、自分の価値の感じかたや、愛情のある関係について、自分が過去に身につけた学びによる縛りをクライエントは徐々に解いていった。このプロセスで最初のステップとなったのは、まず、自分が誰で何者なのか‘知らない’という地点に立つことだった。
 いろんなものがこのプロセスを助けた。初めは、形にとらわれない即興的な自由な身体の動きと、それと対比した身体の静止状態。そして自分の呼吸への気づき。また、自分が自分の価値をどんなふうに感じるかということに関しての、身体と理性の両方が「協力的に支えあう」お互いへの言葉かけをすることなど。

 古い学びが溶解してゆくにつれ、次のように彼は学びはじめた。
「ほんとうの自分を再発見していく作業はとても励みになるし、それは終わりがなく、いつも変化し続けている。こんなふうではなかったならと、自分が思い描くイメージを追いかけて生きるよりも、ただ自分自身の価値を認めて生きることはずっと豊かな経験になる。自分が何者でどんな人物なのかいう理解は、もはや静止したものでも固定されたものでもありはしない。どんな瞬間であっても、この自分に対する感覚は変化し続け、そして僕を驚かし続けることだろう」

4.‘知らない’ことの重要性

 人生の道のりで何を学びとるかは、自分の経験から導きだされる目的、重要さ、成果を決定する。どんなものであれ、自分自身について何度もくり返し学習したことはアイデンティティの形成にたどり着く。アイデンティティは信念の基盤となり、信念は将来自分がどんなふうに行動し反応する人物になるかを定める。学習—アイデンティティ—信念は互いに結びつきあっている。
 人生について何か新しいこと学ぶときや、自分自身と自分がいまいる世界を肯定しようとするとき、必要になるのは、アイデンティティの感覚や長い間もちつづけていた信念のいくつかを、変化させることだ。多くの場合、その最初のステップは、ほんとうの自分自身を‘知らない’‘わからない’という地点に立つことだ。

 こんな質問が出てきそうだ。「よし、それじゃ早速、自分が身につけた学習、アイデンティティ、信念を変ようじゃないか。一体どうやるんだい?」
 サンスクリットのマントラのひとつが、その答えになるかもしれない。

おー、
これは完璧なり
あれも完璧なり
完璧は完璧から生みだされ
完璧から完璧を取りされば
残るはただ完璧のみ
おー、何たる安らぎ、安らぎ、安らぎ

それはちょうど赤ん坊を腕に抱いたときに私たちが感じる、完璧さの感覚だ。ただ完全で、純粋で、何も足りないものはないという感覚。それは、あらゆるものの中に本質的に存在する生まれながらに持つ祝福である。この完全さの感覚はいつでも存在し、どんな治療や変更も必要としない。この完全さの感覚は、静止したものでなく動的なものだ。人生で、なくてはならない進行中の変化を喜んで迎え入れる感覚。それはもっと違った人間になるために、理性だけを働かせて自分の信念をむりに修正しようとするよりも、単純にそこにあるもの、すなわちあるがままの姿に目をむけることへの招待なのだ。

 日本の華道では、活けられた花の枝のひとつが、曲がっていたり折れていることがよくある。これが示すのは、花にとってそれが「自然」な存在の仕方だということだ。折れた枝という「不完全さ」は、潜在的なあり方としてそれは「完全」であるという理解へと私たちを導く。自己の独自性と完璧さを示すサインとして自分の‘折れた枝’を見つけよう。自分自身の‘折れた枝’に目をむけ、受け取り、無いことにするのではなく、それに居場所を与え、認めることを私は提案したい。

 どれほど見かけ上、進歩しているように見えても私たち誰もが、不完全なところや個人の利己的な執着心をもっている。その不完全さと執着は、克服したり、乗り越えたりしなければならないものではない。それは人生の旅の過程の中で、理解され、認められ、受け入れられるものとして存在する。自分個人がもつ短所を受け取り、それを讃えないのであれば、自分内部のある部分はいつも、どこか自分は修復する必要がある存在だと感じつづけることになるだろう。

5. プラクティス「何も‘知らない’」

 このプラクティスは、韓国のスンシャン(Seung Sahn)禅師の教えをもとにして、そこから私が発展させたものだ。
 何か新しいものを学ぶときに必要な、可能性にむかって開かれた状態に自分がなるために、普段の常識的な‘知っている’‘わかっている’という感覚を溶解させることが、このプラクティスの主眼である。

プラクティス「何も‘知らない’」

6. おすすめ書籍・音楽

“Only Don’t Know – The Teaching Letters of Zen Master Seung Sahn”.
This book by the Korean Zen master is highly engaging and enjoyable to read and learn from. His ideas have been of great help in the development of Seishindo. His other two books “The Whole World Is A Single Flower” and “Dropping Ashes on the Buddha” are also well worth reading.

Please check out the following two CD’s:
“ReTURNING” and “Praises for the World” by Jennifer Berezan. Jennifer’s music is circular, lyrical, and great for building a relaxed, joyful state that is in rhythm with your breathing and heartbeat.

My thanks to Sandy Morris for turning me onto these two CD’s and a number of other great selections.

7. エンド・ノート

 あなたからのメール歓迎します。
a) 記事に関する質問やコメント
b) プラクティスをやってみた感想や体験談
c) 精心道コミュニティにふさわしい書籍/音楽/サービス/製品など。それについての短い紹介文をつけてください。お名前を載せてもよいか知らせてください。情報は大切に取り扱います。
seishindo@seishindo.org

 ワークショップ「東京クラス」のスケジュールは、下記のページでご確認ください。www.seishindo.org/japanese/tokyo.html

8. 関連リンク

 www.stephengilligan.com
 スティーブン・ギリガンは、ミルトン・エリクソンから直接学んだ療法士である。「自己間関係理論による精神療法」を確立し、卓越した催眠療法のトレーナーとして国際的に活躍している。彼の著作に触れたり、数ある彼のトレーニングに実際に参加することから、大いに得るものがある。

スティーブン・ギリガン[著] 崎尾英子[訳]
『愛という勇気—自己間関係理論による精神療法の原理と実践』
言叢社(ISBN4905913659)

9. 著作権・登録と解除

 発行者の許可なく転載、複製はできません。一部を除き、当ニュースレター「ピュア・ハート、シンプル・マインド」のすべての内容は、チャーリー・バーデンホップが執筆、編集しています。
Charlie Badenhop © All rights reserved.

 ニュースレター(英文)の登録と解除は、下記のURLで受付けています。原則的に月2回の発行です。

http://www.seishindo.org/newsletter.html

日本語訳:下尾崎 勉〔プロフィール

*訳者へのメール送信はこちらからどうぞ*
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