精心道オフィシャル・ニュースレター
「ピュア・ハート、シンプル・マインド」
Pure Heart, Simple Mind ®
第1巻、第4号 ; 2003年2月15日
『精心道の自己催眠療法』
Self Hypnosis
●
|
【今号の内容】
1. ニュースレターの目的
2. 催眠療法の基本概念
3. 体現された精神のはたらき
4. プラクティスをはじめる前に
5. プラクティス「自己催眠療法」
6. 著作権、登録と解除 |
催眠療法はさまざまな要素を含んだ魅力ある主題である。誰しも満ち足りた人生を送れるようになりたいと思っているからこそ、多くの人が催眠療法への興味をつのらせる。現時点で到達不可能にみえるゴールをいつかは達成したいという願望があり、そして「よりよい方法」がどこかにあるはずだと漠然と感じているのだろう。
重要で忘れてはならないこと:
| |
自己とは
自分の内側にある自分との
そして自分と他者との
両方の「つながり」である
|
| |
私は何者だろう?
私はつながりだ
快適さを味わい、尊敬されることを
私は選びとる、そしてその権利がある
それが私だ」 |
何かに行き詰まっているとき、次のように感じることがある。「自分の中のある部分が、もうひとつの部分を変えたがっている。困ったことに、変えたいその部分は私の提案を聞き入れないのだ」ここで起こっているのは‘コミュニケーションの失敗’と言える。
例えば、私がよく耳にするのは「減量したい、禁煙したい、早起きしたいと思うけれども、どういうわけだか、決してそれを達成したくないと思う自分がどこかに潜んでいる気がする。どうしてこんな対立が存在するんだろう? どうすれば自分自身にしたいことをさせることができるんだろう?」
スティーブン・ギリガン(Stephen Gilligan)の自己間関係療法(Self-Relations Therapy)では、この協力できていない隠れた部分のことを、無視され放置されている「いないことにされた自己」と呼ぶ。
他の精神療法であれば潜在意識または無意識と呼ぶかもしれない。精心道では「身体で経験される自己(somatic
self)」という概念を提起しよう。私たちが催眠療法の中で力を注ぐのは、まず自分自身とのつながりを作り、そこで協力的なコミュニケーションという‘脈略’を発展させることである。学ぶ必要があるのは、自身の隠れた部分と敬意をもってコミュニケートする方法であり、その過程において、よりバランスのとれた毎日が送れるように、自身ぜんたいがもつリソースを活用する方法なのだ。
| ※訳注:自己間関係理論については以下の文献を参照のこと。
「愛という勇気」―自己間関係理論による精神療法の原理と実践
スティーブン・ギリガン[著] 崎尾英子[訳] 言叢社 ISBN4905913659 |
『共同作業』
合氣道が効果的であるひとつの理由は(もしそれが理想的に適切に用いられたならば)、攻撃者に害を与えようとか、襲おうといった意図を訓練者がもたないでいると、何らかのはたらきによって、このメッセージが非言語的に伝わり、攻撃者の心がまえを変えてしまうためである。合氣道において、私たちは攻撃者と共同作業し、彼らのほんとうの欲求に触れることを試みる。攻撃者の筋肉を緩めることができれば、彼らの闘争心は中和される。攻撃を受ける者を保護し、同様に攻撃する者をも保護することがゴールなのだ。私たちはエネルギーと攻撃者のゴールとを対決させるのではなく、溶け合わせることに力を注ぐ。
合氣道ではこう言う:
「敵を変えようとするよりも先に、まず自分を変えろ。その過程において、敵が敵自身を変えたことに気づくだろう」
「第一に自分を制御することを習え。それから他者をやさしく導くように見よ。攻撃者が欲しているものが得られるように相手を助けよ。そのゴールを達成するのに彼が暴力を使わずにすむやり方で」
催眠療法で私たちはこう言う:
「身体で経験される自己を変えようとするよりも先に、まず自分の認知的自己の思考の枠組みを変えよ。その過程において、身体的自己がそれ自体を変えたことに気づくだろう」
「第一に認知的自己を制御することを習え。それから身体的自己をやさしく導くように見よ。操作的になったり対立したりすることなく、認知的自己が欲しているものが充たされるのを助けよ。もし認知的自己が欲している成果が得られていないなら、認知的自己それ自体が変わることが要求されているのだろう。もっとフルに自分の身体で経験される自己と共にいるために」
または他の言いかたもできる:
「認知的自己が解決しようとしつづけることは、問題をもちつづけるのを助長する。もし、より‘正しい’解決がなし遂げられたら、そこに問題はないことに気づく。高次の解決からして見れば、問題というものは存在しないのだ」
『催眠療法における10の重要な原則』
広義の催眠療法の背景を知っておく目的でこの原則を読んでほしい。これらの原則は達成する必要のある「やるべきリスト」ではない。以後のニュースレターで、これらの原則にさらに詳しく触れてゆくことになるだろう。
1) 自分の毎日の意識の枠組みを、異なった‘トランス’へとすっかり変えること。これは通常、身体の姿勢を変えたり、落ち着いた呼吸による心地よい感覚、いろんな意味でスローダウンすること、そして自分の気づきを広げることによってもたらされる。
自己催眠療法とは、今この時の自分の気づき、そして今この時に含まれる部分としての自分への気づきを変化させる‘自然な’方法である。
多くの場合、自分の呼吸と内的対話をスローダウンさせることにより、そして今起こっていることは何なのかさらに気づくことによって、誘導されたトランスという生産的な意識状態へと入ってゆくことが促される。
自分のこころの中にはもう問題は存在しないのだと感じられるように、催眠療法は問題を溶解させる。催眠療法は問題を追い払うことはしない。もし自分の思考を追い払ったなら、問題もまた追い払われるのだ。
2) 自分ぜんたいを、 愛し、受け入れ、協力しあうこと。自分にまずいところは何ひとつない。深い自己愛の感覚をもつこと。
まるごとの自分への信頼感や、それと共同作業する感覚をのばそう。もし、自分ぜんたいに敬意を払わないのであれば、変化を生起させるのに不可欠である共同作業を誘導するのは難しい。
3) すべてがスムースに流れる‘フロー’の状態に入ること。認知的思考が主張するどんな過程よりも、それは自発的な状態である。認知的思考が歩きまわるのにまかせる必要がある。あたかも認知的思考が「フルに目覚めながら夢見ている」かのように。
この‘アクティブ・ドリーミング’の精神状態から解決は進化してくる。解決は‘あなた’からもたらされるのではない。あなたがその中にいる精神状態から、そしてあなたが作っているつながりの中から、もたらされるのだ。問題など存在しないかに見えるように、解決は浮かび上がる。
4) 変化に対し反抗してもがいている部分と、自分の中のもう一方の部分との間に、愉快で敬意にあふれた対話をつくり出すこと。自分のふるまい、信念、気分を、受け入れ栄誉をたたえよう。まるごとの自分と親しくあるために、まるごとの自分に興味をもとう。あなたはいつでも、その時点でできうる最良のことをやっている。
5) 催眠によって誘導された生産的な意識状態に入ることで、自分の内的ニーズに対して責任をもって応えること。認知的自己が達成したがっているものを達成できないのであれば、それは、必要充分な気づきを欠いているか、または何か重要な内的ニーズをおろそかにしていることの、明確な信号として捉えることができる。自分がもつ信念と願望の間にある違いを減少させること。
変わりたがっている自己と、変化を抑えようとしているように見える別の部分との間にある違いをなくそう。この変化を抑えようとしているはたらきには、より深い知恵が含まれている。この知恵を大切に扱うことはとても重要である。
6) 自分の身体の気づきと、それと同時進行で起こる認知的自己からのフィードバックがつくる循環に、慣れ親しむこと。ごく小さな身体の反応すべてを感じとろう。それは言葉にならない知恵を内包している。自分のことで何かを変えたいと頭で思ったとき、肩に力が入ったりどこであろうと身体の一部分に緊張感が生じるようであれば、変化をやりとげるのは難しい。これを理解することは決定的に重要である。
身体で経験される自己が安心感と支持されているという感覚をもちながら、生産的に動ける状態にあるとき、自分の身体に起こる変化の現れかたに気づき、そこに表出している情報を見つけること。身体的自己からの完全な合意を欠いたまま、認知的自己が求める変化を起こそうとすることは、長期的にみて非生産的な生きかたとなる。
7) 自分のもっている思考、感覚、願望に対して(どれかひとつにより重要さを与えるよりはむしろ)すべてに同等の重要性をもって、それらを意識していること。‘ちょっとしたこと’が最終的にはもっとも重要であることはめずらしくない。
8) すべての思考、感覚、感情とともにとどまり、それを歓迎すること。
これは大切だ。誰しも、これは間違っているとか、きっと痛い思いをするに違いないと自分が考えるものを捨て去ろうとしがちだ。一方で、自分がポジティブだと信じる思考や感覚だけを持ち続けようとする。それは生産的とはいえない。シンプルにすべての思考、感覚、感情とともにとどまり、それらを歓迎しよう。
9) 自分のありかたや、自分がしていることを変更せずに、自分の経験を探究すること。変化が必要であるという知覚は、しばしば逆に変化の過程を妨げる。自分を変えようとはせずに、自分の思考プロセスと感覚と経験を探究しよう。もしほんとうに真に必要であったなら、すべての必要な準備がそろったとき、変化それ自体が自然に生起する。
10) 思考する精神はものごとを分離する。正しい−間違い、良い−悪い、完全−不完全。その分離のはたらきが問題を作りだす。催眠療法の理念は、思考よりも先にやってくる精神を経験することにある。知らない心を経験することである。ゴールは自分が何をすべきか分かることではなく、ゴールとはすでにそれをやっている状態に自分がいることだ。そこでは、解決されるべき問題などない。今この瞬間にいるだけだ。
-----------
以上が自己催眠療法の理念と経験に関する原則である。以後のニュースレターでこれらの原則をさらに掘りさげるので、自分の内部にこの概念をとどめておこう。
プラクティスをはじめる前に、次のことを知っておいてほしい。
A) このプラクティスは、行動・習慣に関して特定の結果を得るためのものではない。これはとても大事な注意点だ。自分が不満をもっているものや自分自身を変えようと試みるよりはむしろ、そこで求められていることは、瞬間に起こっていることは何なのかに注意関心を払うことである。このプラクティスは、自分の身体で経験される自己と、うまくコミュニケートする方法を習うのを助けるために作られている。もし生産的な変化が見られたとしても、それはあなたが自分の身体的自己と、質の高いコミュニケーションがとれたことの副産物である。
B) 各ステップの終わりにする呼吸はとても重要だ。もし、あわてて呼吸していることや3回とも満杯の呼吸をしていないことに気づいたなら、あなたはこのプラクティスをすることにあまり興味がもてていないのだろう。もし何かを避けて見ないようにしている自分や、呼吸を急いでやりすごそうとしている自分に気づいたなら、それは自分について何かとても重要なことを学びはじめる場所にさしかかっている。これはとても重要な学びになり得る。浅い呼吸は、不安感を導いたり、自分は無能だという感覚や、必要とされる知覚能力の欠如をいっそうひどくさせる。満足いく経験にするために、自分の生体組織を充分にスローダウンさせよう。
C) この練習は「時間の経過とともに徐々に」学ばれるものだ。それぞれの個人はどこか独特で違っている。プラクティスをする個人それぞれの考えや感覚や経験による。このプラクティスは、自身をもっとフルに探険しようという招待だ。そして、生産的で活き活きとした精神の状態へと入ってゆく方法を学ぶためのものだ。この練習から、洞察や変化が得られるとは限らないことがやがてわかるだろう。自分の行動・習慣または考え方が、のちのち「それ自身が自然に」変わるのを、ただ見つけるだけである。それでよいのだ。このプラクティスは、コースが終わったあと徐々に、完了され学ばれるように意図して作られている。
はじめに
以前にやったことがあってもなくても、プラクティスをはじめる前に一度、以下の説明を通して読むこと。そうすれば途中でノートを参照せずにすむ。もちろん読みながらやってもかまわないが、このプラクティスがほんとうに功を奏すのはノートなしで行ったときである。
このプラクティスは、あなたが何かひとつ問題をもっているということを仮定している。実際のコースの終了後に、あなたがより理解したいまたは変えたいと思っている、関係や状況、人生における問題があることを想定している。
1) 楽に座る。
2) 「私は〜」で始まる言葉を口に出して言う。
あなたが変えたいと思っているまたはよく理解したいことに意識を向けよう。自分が満足できる結果にすでに到達している自分を思い描き、それを信じよう。その状態でどう自分が感じるかの描写を述べる。味わってみよう「人生」を、そして満足のいく成果に到達している自分自身を。例として、もし体重を減らしたいならこう言うだろう「私は健康的だ。最適の体重を維持している、そして自分自身が快適だ」。これがあなたにとっての「私は〜」で始まる一文になる。
ここで文をつくるとき、自分がどうなりたくないのかを描写するような否定文よりはむしろ、すでに自分のゴールを完了した状態でどう感じるか、どう見えるか、どんな感情でいるか、イメージを心に描くこと。これはとても重要だ。適正でない形式の「私は〜」で始まる一文は、「私はもう太りすぎじゃない、いい感じだ」などである。実際、成功をおさめるアスリートは試合の重要な瞬間に「私はもうフィールドのゴールをミスしたりはしない」などとは言わない。そうではなく、自分が肯定的な成果にすでに到達しているとき、何をしていて、どう感じるのかを明言しよう。
(ごく自然に、「私は〜」で始まる一文はプラクティスの途中に変わることがある。または同じ問題を次回にもくりかえすこともある。それでかまわない。いずれにしろ肯定的なかたちで「私は〜」で始まる一文を続けていれば、やがて変化はおとずれる)
一度、「私は〜」で始まる言葉を言ったなら、深く3回 呼吸しよう。この呼吸は重要だ。大きくふくらむようにすること。この呼吸のために、充分な時間をとる。
3) 鏡を見ながら(可能なら)、楽に座る。深く呼吸をして、からだの力をぬき、自身にフレンドリーな態度でいよう。
4) 「私は〜」で始まる一文をもう一度述べる。ゆっくりと目的、意味をこめて、おだやかな声で。3回
深く呼吸する。
5) 鏡を見ながら、 見えているもの3つを述べる(自身以外のもの)。
6) 鏡を見て楽に座りながら、聞こえる3つの音の名前をあげる。3回 深く呼吸する。
7) 鏡を見て楽に座りながら、自分のことで感じるまたは注意がいくこと、3つを述べる。
ここでは「嬉しい」「悲しい」「太ってる」「痩せっぽっち」といったコメントはしないで、むしろ、自分の姿勢、かたむき、からだの動き、もしくは顔にあらわれていることや、からだの内面または表面で感じることがらに注意をむけよう。例として、「私には聞こえている、心臓が打つ音が。私の姿勢は前に曲がっている、私の左目は右目よりも少し開いている」など。
何も修正を加えずに、ただ自分はいまどんなふうなのかに気持ちを向ける。
3回 深く呼吸する。
8) 「私は〜」で始まる一文を再び述べる。
3回 深く呼吸する。
9) 鏡を見ながら、 見ているもの2つを述べる(自身以外のもの)。
3回 深く呼吸する。
10) 鏡を見て楽に座りながら、聞こえる2つの音の名前をあげる。
3回 深く呼吸する。
11) 鏡を見て楽に座りながら、自分のことで感じるまたは注意がいくことを、3つを述べる。
3回 深く呼吸する。
12) 「私は〜」で始まる一文を再び述べる。
3回 深く呼吸する。
13) 鏡を見ながら、 見ているもの1つを述べる(自身以外のもの)。
3回 深く呼吸する。
14) 鏡を見て楽に座りながら、聞こえる1つの音の名前をあげる。
3回 深く呼吸する。
15) 鏡を見て楽に座りながら、自分のことで感じるまたは注意がいくことを、1つを述べる。
3回 深く呼吸する。
16) 「私は〜」で始まる一文を繰り返す。
3回 深く呼吸する。
17) 1〜2分、自分のこころが歩きまわるのにまかせよう。
3回 深く呼吸する。
18) 何でもよいから、このとき、こころに浮かぶことを述べる。
身体的に感情的にどう感じているか、どんな考えであれ自分の心に浮かぶものを述べよう。
1回のプラクティスはこれで完了。この催眠療法をいつでも自分がしたいときにくり返すといい。やがて、気がかりであった問題と自分との「関係/つながりかた」が、時間の経過とともに変わってゆくのに気づくだろう。
|