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精心道オフィシャル・ニュースレター
「ピュア・ハート、シンプル・マインド」
Pure Heart, Simple Mind
®

第1巻, 第8号; 2003年4月15日

『思考する精神を溶解する』
Melting The Thinking Mind

このニュースレターは、思いやりと明快さをもって創造的に生きようとする人たちに向けて配信しています。ご感想・ご質問は下記のアドレス宛にお願いします。seishindo@seishindo.org




【今号の内容】
1. スタート・ライン
2. 自分を信じること
3. 考える精神のはたらき
4. プラクティスの前に
5. プラクティス「思考する精神を溶解する」
6. 関連リンク
7. 著作権



1. スタート・ライン

 自分とのつながりを育てる魅力ある方法として催眠療法への理解をさらに深めるために、この号と合わせて催眠療法のプロセスについて書いている1巻4号も参照のこと。

 私の考えでは、催眠療法の主たる目的のひとつは、思考する精神を溶解することにある。それによってその人がもつ最大限の知性が姿を現すからだ。そういう意味で自己催眠療法と瞑想は同種のものといえる。
 自分が瞑想しているとき、考える精神を溶かし、自分自身との新しい関係、そしてまわりの世界との新しい関係へと入っていくのが分かる。
 自己催眠療法と瞑想の目的は、プラクティス(練習)をすることで、習慣を変えたりまたは自分自身を変えることにあるのではなく、その人の核となる自己 [core self] とのより深い関係へと入ってゆくことにあると私は考えている。自分が知りたい‘真実’は、真に自分自身を実現化することの中に見い出されるのだ。

 真の自己を知る探求では、次の問いに答えることが求められる。「私が‘自己’と呼ぶものはいったい何なのだろう?」
 この問いに含まれる矛盾に徐々に気づくにつれ、自分と自分が生きている場所について同時に直感的な理解がなされる。
 自己を発見してゆくプロセスにおいて、自分の行動と自分がいる世界の中での存在のしかたが変ってゆくのに気づく。その変化はどこか悪い所を直した結果として起こるのではなく、自分の気づきや感受性をシフトさせたことの副産物として、変化は生起する。変更を必要とするような悪い所はなにひとつ存在しない。健全なプロセスが辿られたなら、変化はごく自然に生起する。不健全なプロセスであったなら起こるべき変化は妨害される。

 カップに入った熱い紅茶の中でハチミツを溶かすように、自分の考える精神のかたまりと、現時点で自分がもっている何が“問題”なのかという認識を溶かしてゆく。それが催眠療法と瞑想の両方が辿るプロセスであり、それによって私たちは満たされた状態を手にできるのだ。


2. 自分を信じること

 最近、数々の小売業で大成功をおさめているビジネスマンの話を友人から聞く機会があった。最初私は、友人がビジネスで成功するハウツーを話すつもりなのだろうと思ったのだが、それは違っていた。以下のストーリーは、若干私が形を整え直したものである。

 順調にいっている大規模な家族経営のビジネスを受け継ぐところから、この男の話は始まる。彼は数年のうちに経営を低迷させ、しまいには倒産させた。倒産の後に彼は語った「ビジネスは失敗したけれども、自分じゃ失敗した気がしない。まだまだ自信はある。うまくやれた所もあったと思う。自分がやったことで何が良かったのか何がまずかったのか、こと細かに明らかにしようなんて思っていない。自分がいいビジネスマンなのか、悪いビジネスマンなのかなんて知らないね。ただ自分自身と、自分が持っているヴィジョンを信じ続けるだけだ」。

 倒産後、彼は新しいビジネスのために資金を集め、再スタートしてみたものの、当然の成りゆきとして短期間のうちに彼は倒産の憂き目にあった。その後、彼は語った「こうなってしまった今でも、まだまだ自信はある。明るい閃きも見れたし、うまくやれた所もあった。今度もまた、正しいか間違いか、良いか悪いかなんて考えたりはしない。自分が考えているのはどうやって働きつづけるか、自分の夢を完全に成し遂げるためにどうやって資金を借りようかということだ」。

 男はさらに資金を借りて新しいビジネスを始めたものの、言わずもがな、また倒産させた。3回目の倒産の後、彼は語った「今回、ついに勝利の味をあじわえたんだ。かなりいい所まで近づいてきた」。
 この男の気力たるやたいしたものだ。失敗がつづく苦しい局面と向き合いながらも、とてつもなく大きな自信をもっている。ストリートに戻った彼が次に借りることのできたのは、ほんのわずかのお金だった。限られた現金では‘本物の’ビジネスを始めることはできず、彼は小さなピックアップ・トラックを借りた。いろんな卸売り市場を回って、安価で良質のものを除いては、互いに何の関連もないように見える製品でもとにかく安く販売できるものだけを、仕入れる羽目になった。トラックに品物を積み込み、人通りの多い道に駐車し、通行人に向かって呼び売りをした。ここから、新しい小売業に不思議な現象が起こり始め、徐々に彼は商談を重ねてゆき、1台のピックアップ・トラックからやがてはチェーン店をもつまでの大きな成功をおさめたのだ。

 成功の要因となったものは何なのかと人に訊かれて、彼は答えた「自分を信じること、そして自分のプラス面とマイナス面のすべてをことさらに調べあげて分析したりはしないこと」。彼はつづけた。「最初から成功するのは分かっていたんだ。初めて倒産したとき、仕事をやりだして以来かつてなかったほどの自由な時間を突然持つことになった。急に手にした自由にできる時間を使って何をすべきか、2つの選択肢を思い描いた。

1. 自分がやってきた間違いについて何度も検討をかさね、たくさんある過失を将来にわたってやり直そうとすること。
2. リラックスする時間をとり、心の中の夢が息づいているうちに、人生の新しい展望を回復させること。

 もちろん僕は後者を選んだ。リラックスした状態にいるうち、成功しようと走り回っていたときには分からなかったことが分かるようになった。何が正しく何が間違いだったのかを精密に分析することは、たいへんな時間と労力がかかる上に、結局は成功の方程式など得られるはずなどないことは分かってた。成功の方程式というのもは既に自分の中にあるんだ。だから僕の仕事はこの方程式が外に出てこられる道を見つけてやることだったんだ。自分は何をすべきかを知ろうとはしなかった。ただやるしかない状況、つまりもう既に自分がそれをやっている状態に自分を置いたまでだ」

 私はこの話からずいぶんとインスピレーションを受けた。直面している挑戦が何であれ自分を信じつづけることは、私が自分自身に与えようと思いながらもなかなか与えることのできていなかった贈り物である。こんな見事な例から何かを学べるのはすばらしい。このビジネスマンがもっていた信念は私たち全員への贈り物だ。そして同時にコンサルタント業者がこの男のメソッドを実際に指導している場面を考えると、つい笑みがこぼれてしまう。

 またこの話を聞いて、私は数年前に読んだ雑誌の記事を思い出した。大成功した人々がたどって来た道のりをその記事は紹介していた。彼らの全員が最低でも過去に3、4回は失敗を重ねており、どの成功者も次のように述べていた。
「自分が以前にしでかしたすべての失敗がなかったなら、今日のようには成功しなかっただろう!」

 あなたはどうだろう? 将来の成功の種となるような‘失敗たち’を持っているだろうか? きっと誰もが持っているに違いない。


3. 考える精神のはたらき

 以前の号に載せた「催眠療法における10の重要な原則」は、催眠療法の理解に焦点をあてるためのレンズの役割を果たすものだ。

 10番目の原則は以下のようなものだった。
 (1巻4号からの抜粋)

 思考する精神はものごとを分離する。正しい−間違い、良い−悪い、完全−不完全。その分離のはたらきが問題を作りだす。催眠療法の理念は、思考よりも先にやってくる精神を経験することにある。知らない心を経験することである。ゴールは自分が何をすべきか分かることではなく、ゴールとはすでにそれをやっている状態に自分がいることだ。そこでは、解決されるべき問題などない。今この瞬間にいるだけだ。


 この原則は、考える精神を溶解することとつながっている。理性だけを使って完全に理解し順応するには、あまりにも私たちが生きるこの世界は、複雑で多様性に富みすぎている。

 正しい答えや何ひとつ欠けたものがない完全なメソッドを探すことに時間を費やせば費やすほど、身体で経験される自己 [somatic self] に“あらかじめすでに”備わっている、いつでも利用可能な英智を感じとる経路をますます失う。
 解決が必要な状況や難しい問題があって、自分の理性的精神が答えを見いだせないときこそ、身体で経験される自己の中に重要な英智が潜んでいるという可能性に向かってオープンな意識でいつづけよう。思考する精神には休んでもらい、そのかわりに直感的な身体で経験される精神あるいは潜在意識に出てきてもらおう。
 身体で経験される精神がフルに活かされれば、私たちの基本にある自己と世界の認識の仕方が変化する。気づきと解決能力が増す。この状態に入ると、心身が健康でいるために必要な変化が、身体ぜんたいの知性によって創出されるのだ。ビジネスの成功に必要な変化もまたしかり。確かに‘言うは易し’かもしれないが、試す価値はある。

 有名な証券トレーダー、ベンチャーキャピタリスト、未来派アーティストについて読んだところ、彼らは自分の仕事に関して異口同音に語っている「ある程度の良い環境と経験があれば、将来の長期的な動向は予測可能である。しかし明日起こることを予知することはできない。結局のところ、決断をくだす前に分類しなければならないあまりにも多くの情報があり、しかも往々にして受け取る情報の多くは互いに矛盾している。長い目で見れば、何をすべきかすべきでないかは、自分の直感に頼ることになる。正しい選択や方法論は絶対的なものではない。自分がくだす決定は虫の知らせによるものだ。それは、過去に起こったこと、今起こっていること、そしてこれから起こるだろうことについての直感なのだ」。

 催眠療法のプラクティスは、自分たちがどこにいて、どんな人間であるのか直感的に理解することに役立つと私は確信している。私たちが行うプラクティスの目標は、自分たちが何者なのかを正しく判定することではなく、たんに知的な理解によって過小評価されたにすぎない自己感覚に気づき、その自分についての感覚を心で感じとることにある。私たちが真の自己の本性に気づいたとき、すべてが‘あるべきよう’にたどり着く。それは、熱すぎもせず冷たすぎもせず、大きすぎず小さすぎず、少女ゴルディロックス [※訳注] が満足感いっぱいに宣言する「これが、ぴーったりだわ!」というようなものだ。催眠療法で経験されるものもまた、この‘ぴったりくる’感覚なのだ。

※ゴルディロックス=イギリスの昔話「3匹のクマと女の子(Goldilocks and the Three Bears)」の主人公。ちょうどよい温度のスープ、ちょうどよい大きさの椅子、ちょうどよい固さのベッドを探してまわるストーリー。


4. プラクティスの前に

 プラクティスをはじめる前に、まず知っておいてほしい。

A) このプラクティスは、行動・習慣に関して特定の結果を得るためのものではない。これはとても大事な注意点だ。自分が不満をもっているものや自分自身を変えようと試みるよりはむしろ、そこで求められていることは、瞬間に起こっていることは何なのかに注意関心を払うことである。このプラクティスは、自分の身体で経験される自己と、うまくコミュニケートする方法を習うのを助けるために作られている。もし生産的な変化が見られたとしても、それはあなたが自分の身体的自己と、質の高いコミュニケーションがとれたことの副産物である。

B) 各ステップの終わりにする呼吸はとても重要だ。もし、あわてて呼吸していることや3回とも満杯の呼吸をしていないことに気づいたなら、あなたはこのプラクティスをすることにあまり興味がもてていないのだろう。もし何かを避けて見ないようにしている自分や、呼吸を急いでやりすごそうとしている自分に気づいたなら、それは自分について何かとても重要なことを学びはじめる場所にさしかかっている。これはとても重要な学びになり得る。浅い呼吸は、不安感を導いたり、自分は無能だという感覚や、必要とされる知覚能力の欠如をいっそうひどくさせる。

C) この練習は「時間の経過とともに徐々に」学ばれるものだ。それぞれの個人はどこか独特で違っている。プラクティスをする個人それぞれの考えや感覚や経験による。はじめてこういった練習をする場合は、難しく感じるかもしれないが、実際この練習は多くの人の役に立っている。思い切ってトライしてみよう。

5. プラクティス

今回のプラクティスは「思考する精神を溶解する」である。


6. 関連リンク

www.stephengilligan.com
 スティーブン・ギリガンは、世界的に名高いミルトン・エリクソン博士の晩年の中心的生徒である。私の古くからの友人であり、仕事仲間であり、またメンターでもある。彼は「自己間関係理論による精神療法」(Self relations therapy)を確立し、卓越した催眠療法のトレーナーとして国際的に活躍している。彼の著作に触れたり、たくさんある彼のトレーニングに実際に参加することから、大いに得るものがある。
* * *
『愛という勇気―自己間関係理論による精神療法の原理と実践』
スティーブン・ギリガン[著] 崎尾英子[訳] 言叢社 ISBN4905913659

* * *
 催眠療法と自己間関係療法を学ぶ人を対象に毎年開かれる「トランス・キャンプ」というプログラムがこの夏も開かれる。私は今回も全体を通して手伝うほか、2日間の私自身のワークショップもこのプログラムに含まれている。詳細はスティーブンのサイトを参照のこと。


7. 著作権

 発行者の許可なく転載、複製はできません。一部を除き、当ニュースレター「ピュア・ハート、シンプル・マインド」のすべての内容は、チャーリー・バーデンホップが執筆、編集しています。
Charlie Badenhop © All rights reserved.

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日本語訳:下尾崎 勉プロフィール

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